「みちびき」でセンチメートル級測位実現!CLAS入門

「みちびき」でセンチメートル精度の位置情報!?
最近ニュース等で見聞きする「日本版GPSの「みちびき」を受信して、センチメートル精度の位置情報を取得可能に」がついに実現しました!という話題。
「あれ?その話、数年前のニュースでも見たことあるけど。。」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
自分のスマホでも「みちびき」の信号を受信できているはずなのに、そこまで位置情報の精度が良くないとお感じの方、どうしてなのでしょう?
補完信号と補強信号
みちびき(QZSSが正式名称)の信号は、大きく2種類に分かれます。
補完信号と補強信号です。
スマートフォンなど多くの機器は、GPSと同等の信号であるみちびきの補完信号だけを受信しています。
補完信号だけでは、センチメートル精度の位置情報は得られません。
補完信号で衛星数が増える
準天頂衛星システムとしてのみちびきは、高層ビルに囲まれた場所でも観測可能な天頂付近に長い時間留まることで、観測可能な衛星数が増えるというメリットがあります。
その結果、位置精度は確かに向上します。それでも、精度は10メートルから数メートル程度です。「単独測位」と呼ばれるこの方式では、測量用の数百万円するアンテナと受信機セットを使っても、精度は1メートルを切ることは難しいです。
また、いわゆるカーナビでは、地図や他のセンサーの情報を総合判定することで車を道路の上に戻して表示させています。
みちびきの補強信号
みちびきが送信している、補強信号の一覧です。
補強信号 | おおよその精度(水平) | 搬送波位相の利用 | 最初の位置が決まるまでの時間 |
---|---|---|---|
SLAS | 100cm | × | 瞬時 |
2周波SBAS | 100cm | × | 瞬時 |
CLAS | 6cm | ○ | 1分以内 |
MADOCA-PPP | 10cm | ○ | 15分から30分 |
この中から CLAS 信号に、注目して説明します。
CLASとは
CLAS(シーラス/Centimeter Level Augmentation Service/センチメーター級測位補強サービス)とは、PPP-RTKと呼ばれる方式で、次の2つの特徴があります。
- 誤差要因の補正値を共通部分とグリッド部分に分けて送信する
- 搬送波位相を使う
グリッド部分の情報は、日本とその周辺(サービス範囲:みちびき公式サイトより)しかないので、他の地域では使えません。また、搬送波位相を使うので、スマートフォン内蔵の受信機等では測定できません。
今こそCLAS
2020年11月30日から、CLAS で配信する補強対象衛星数を最大17機へと拡大したことと、その CLAS 信号を受信できる機材※が廉価で販売開始されたことで、CLAS を使う環境が整いました。まさに2022年が「みちびきを受信して、センチメートル精度の位置情報を取得可能に」なったと断言できます。
※ mosaic-CLAS(Septentrio社)、NEO-D9C(u-blox社) <2022年5月現在>
SSR(状態空間表現)とOSR(観測空間表現)
- 衛星位置誤差
- 衛星時計誤差
- 信号バイアス
- 電離層遅延量推定誤差
- 対流圏遅延量推定誤差
RTKとの比較
RTK 測位は、最初の位置が決まるまでの時間は、数秒と短く精度も 2cm 程度というメリットがあります。
しかし、精密位置がわかっている基準点が必要で、その基準点からの補正情報を常時受信しないと RTK による測位はできません。
シビアな精度が必要でなければ、CLAS で十分という用途が増えると思います。
終わりに
より詳細な情報のご希望やご質問などありましたら、別途 CLAS セミナーの開催も可能です。
当社お問い合せページよりお問い合せください。
参考ページ:東京海洋大学 久保信明 教授「みちびきの測位補強信号の現状と今後」[PDF]