更新日:2020年12月24日/公開日:2020年6月5日
u-center のキホン ②

RTKを使用し高精度測位に挑戦してみよう!


はじめに

こんにちは、AITOYA株式会社の小川です!
当社は、cm級位置情報測位デバイスの「iChidori®(いちどり)」シリーズを始めとした、位置情報ソリューションをお客様に提供している企業です。 製品の説明はこちらをご覧ください!

前回は、評価ボードのセットアップ、u-center のインストール、単独測位を行い、ひと通り測位ができるところまで挑戦しました。 「u-center」を使って単独測位をしてみよう!
今回はRTK(アール・ティー・ケー/Real Time Kinematic)という方法を使用して、超高精度に位置測位を行ってみましょう。
それでは、早速使っていきましょう!

GNSSの仕組み

……と、その前に一旦GNSS(ジー・エヌ・エス・エス)の仕組みを勉強しましょう!

まず、GNSS という呼称ですが、馴染み深い GPS(ジー・ピー・エス)というのは、Global Positioning System の略で、アメリカが打ち上げた衛星を用いて行う位置測位のみを指します。GPS  以外にも、QZSS(日本)、GLONASS(ロシア)、Galileo(EU)、Beidou(中国)等の衛星が存在し、それらを総称してGNSS(Global Navigation Satellite System)日本語では「全球測位衛星システム」と言います。GNSS は、次の三つの要素で構成されています。

  1. GNSS衛星(スペース・セグメント):高度約2万〜3万kmの上空を周回しており、各国の衛星を合わせると 100機近くあります。各衛星に搭載された時計は同期しており、自身を識別する信号(コード)と自身の3次元位置(軌道情報)を定期的に地球に向かって発信しています。
  2. 地上管制(コントロール・セグメント):各衛星を監視し、衛星の正確な軌道を常に計算し、定期的に衛星に向かって送信しています。
  3. GNSS受信機(ユーザー・セグメント):衛星からの信号を受信し、衛星までの距離を計測します。地上管制から送られた各衛星の軌道情報も、衛星からの信号を通して、受け取ります。

では、GNSS による位置測位どういう仕組みで動いているのでしょうか?

原理はとてもシンプルです。計測地点から最低4つの衛星までの距離がわかれば、各衛星までの距離を半径とする4つの球面の交点が計測地点の3次元位置になるというわけです。 球面の中心は、各衛星の現在位置で、衛星からの信号に含まれる衛星の軌道情報から計算できます。(原理的には、3つの衛星までの距離がわかれば位置を特定できますが、実際には受信機内部の時計と衛星内部の時計にはずれがあり、位置を特定するためには更にもう1つの衛星が必要です。)

衛星は、個体を識別する信号(コード)と時刻情報(送信時刻)を、一定間隔で(1秒間に1000回)地球に向かって送信しています。

衛星内部の時計が衛星間で精度良く同期しているというのがポイントです。

GNSS受信機内部の時計もそれに同期していれば、衛星からの信号の受信時刻を計測することで、到達時間(信号が送信されてから受信するまでに掛かった時間)がわかります。到達時間がわかれば、それに光(電波)の速度を掛けたものが衛星までの距離になります。

原理はシンプルなのですが、実際にはさまざまな誤差要因があります。

衛星の軌道情報や衛星の時計にも誤差があり、また、上空の状況(電離層や対流圏)によっては、電波の進む速度も変化します。そのため、5〜10m程度の精度が一般的です。スマホやカーナビのGPS(GNSS)は、この仕組みで動いています。

RTKの仕組み

そこで今回使用するのが、RTKという仕組みです!

RTKは、「 相対測位」と「 搬送波測位」という2つのアイディアで、誤差数cmの精度を実現しています。

計測地点の近く(10km圏内が望ましい)に、事前に正確な位置のわかっている受信機( 基準局と呼ばれます)があれば、そこで受信された信号と計測地点で受信した信号(補正情報と呼ばれます)との差を取ることで、共通する誤差の成分をキャンセルすることができます。

衛星と受信機の時計誤差がキャンセルされ、電離層と対流圏の誤差が大幅に低減します。これが相対測位のアイディアです。予め位置のわかっている基準局を必要としますが、これだけで誤差が数十cmになります。

また、衛星までの距離を計測する際に、衛星から送られてくる信号の送受信の時間差を用いるのではなく、信号を送信している電波(搬送波と呼ばれます)の波の数を数えます。

搬送波の1つの波の長さは約19cmになります。搬送波を1目盛が19cmの物差しと捉えて、衛星から計測地点までの間にこの19cmの波が何個あるかを数えて、衛星までの距離を測ります。

衛星から送られてくる信号の時刻情報の分解能(1目盛)は、約300mです。それに対して、もっと目盛の細かい物差しを使うことで、衛星までの距離を精度良く計測するというのが、搬送波測位のアイディアです。

衛星までの距離は、丁度19cmで割り切れるわけではないので、数える波の数は、整数値とその端数です。

GNSS受信機では、この端数がmm単位の分解能で計測できます。しかし、整数値まではわかりません。ところが、端数を除けば、波の数は整数というのがポイントで、未知数とはいえ、その可能性のある値は有限個です。

計測地点のおおよその位置は(通常の GNSS の計算で)数m単位の精度でわかりますから、整数値の範囲は、ある程度絞り込むことができます。

RTKでは、更に、多数の衛星を使って、この整数値の最も可能性の高い組み合わせ(衛星ごとに未知の整数があるのでその組み合わせ)を推定しています。

以上の相対測位と搬送波測位の2つの仕組みにより、RTKでは、数cm程度の精度になります。

尚、相対測位と搬送波測位の両方を用いる方式の1形態がRTKです。

他にも、長時間の衛星の動きから整数値の組み合わせを推定するスタティック測位と呼ばれる手法もあります。こちらは更に精度がよく誤差が数mmのオーダーです。ただし、計測には最低1時間以上を要します。

RTKは、計算が短時間(ほぼ瞬時)に完了し、移動体の計測にも使えるため、広く利用されています。(RTKのK(Kinematic)は、移動できるという意)

RTKの他にも、相対測位と搬送波測位の組み合わせ方によって、下表のような測位のバリエーションがあります。

  単独測位 相対測位
コード測位 一般的な GNSS(スマホ、カーナビなど) ディファレンシャル測位(DGNSS)
搬送波測位 高精度単独測位(PPP) スタティック測位、キネマティック測位(RTKなど)

RTKを使用して位置情報を取得してみよう!

……というわけで、前置きが非常に長くなってしまいましたが、今回はRTKという測位方法を使用して、迅速かつ正確に位置情報を取得してみたいと思います。

今回は東京都内で使用することを前提とし、全国の技術者に愛されている「トランジスタ技術」を発行しているCQ出版社の基準局を使用します。

メニューバーの Receiver → NTRIP Client を選択します。

各項目には、下記のように入力します。

(2020年4月15日現在のものです、今後設定等が変更になる可能性があるので、善意の基準局掲示板にて最新の情報を確認するようにしてください)

  • NTRIP:160.16.134.72
  • Port:80
  • MountPoint:CQ-F9P
  • User-ID:guest
  • Password:guest

以上の情報を入力すると、

画面下の NTRIP Client のところに、IPアドレスと接続を示すインジゲータが表示されるはずです。
緑色のインジゲータになってれば接続できている証です。

さて、ここまで設定が完了するとRTKを使用した測位が始まります。
下記の表示を確認してみてください。

FIX になっていたら正確に位置情報が取得できている状態です。
FLOAT であればまだ正確に位置情報が取得できていません。(ただし1m程度の誤差範囲に収まる)
これで、高精度な位置取得が出来ましたね!

次回

今回はRTKという方法を用いて、高精度・高速な測位を試してみました。さまざまな場所で使用できる機能なので是非試してみてください!次回 RTKに必要な基準局を設置してみよう!もどうぞご覧ください!

製品紹介

当社が開発した、GNSS(全球測位衛星システム)を利用したIoT対応センチメートル級位置情報サービス「iChidori®」です。デバイス等の詳しい紹介はこちらよりご覧ください。

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